LETTERS 〜日常にある、ココロあたたまるお話〜

はじめての味

投稿者:ゆきちゃん

イラスト

私の父は私が小学校へあがったころに、その時勤めていた会社をリストラされた。もともと裕福ではなかった我が家。それでも、生活は一変した。まず、それまでたまに買ってもらっていたお菓子が全く買ってもらえなくなった。そして、なかなか就職先の決まらない父は塞ぐようになり、母からも笑顔は消え、つまらない言い争いもしていた。
そんなある日、やっと父に新しい仕事が見つかった。「せっかくやから、外食しよう。いらん思いさせたな。」と明るい顔で父は言った。わたしは自分のお菓子より、その笑顔が嬉しかった。久々の外食は家族で近所のラーメン。でも実はそれまでも、外食なんてほとんどしたことがなかった。「なんでもたべてええからな。せっかくなんやから、ジュースも頼み。遠慮すな。」子どもなりに外食なんて遠慮してしまう。でも嬉しそうな顔につられてバヤリースのオレンジジュースを頼んだ。初めて飲んだその味は思っていたよりずっと甘くてびっくりしたことをすごく覚えている。とても学校の友達に自慢できるものじゃないけれど、すごくすごく嬉しかった。
それからわたしは、迷惑をかけながらも今年やっと成人式を迎えた。一人暮らしのいまでも、両親と電話をすると飲みたくなるのはあの味である。

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