LETTERS 〜日常にある、ココロあたたまるお話〜

復興への乾杯

投稿者:いち関西人

3月11日から1ヵ月後、3度目の物資輸送と復旧作業に向かう為、石巻の友人と連絡を取りあった。食事、ライフライン、必要な物資の事などを話した。彼は情報が入って来ないので息が詰まりそうだと言っていた。
私は「今何がしたいですか?」と尋ねた。彼は沈黙の後、「風呂入って、冷えたビールが飲みたいね」とポツリ言った。そして救援物資やラジオなどと共にスーパードライを積み込み石巻へ向かった。
12人の方が身を寄せ合う倉庫に到着したのは夜の10時を過ぎていた。物資を降ろし終え、焚き火を囲む皆さんの視線はスチロール箱の氷に浮かぶ銀色の缶に注がれている。「皆さんどうぞ」と声を掛けると"待ってました"とばかりに手に々銀色の缶が伝染してゆく。「遠い所ごありがとうございます。久しぶりに頂きます」友人の言葉の後静かに乾杯し、それぞれに海に向かい献杯した。数分後にはほとんどの方が2本目のプルタブをプシュッとさせていた。関西から運んで来たごく普通のスーパードライを命の水がごとく飲み干して頂けたのは本当に嬉しかった。「ビールってこんなに旨かったかな?」夜空を見上げながら彼が言った。焚き火の灯に輝く銀色の缶が、希望の灯に見えた。このほろ苦いドライの味は誰もが忘れる事は無いだろうと思った。

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