LETTERS 〜日常にある、ココロあたたまるお話〜

苦いのは苦手だった。

投稿者:もげたん

20年ぶりに父に会った。私が幼い頃に離婚した両親。母の言動や態度から、きっと会うことはないと思っていたのに母がやらかしたわりかし大変なコトにより、父と連絡をとる機会を得て会うくだりになり、何度か電話でやり取りして、父の家におじゃますることに。
ずっと遠くにいると思っていた父は、隣の県に住んでいたことがわかり意外と近くにいたんだ、と少し笑った。父の家を訪問するが、いまいち会話が弾まない。すると唐突に父が「おい、お前、ビール好きか?」と聞いてきたのので「うん、好きだよ。」と答えると、父が笑顔になり「じゃぁ、いいトコ連れて行ってやる!!」とわたしの手を握った。とても熱くじっとりと汗をかいた手のひらだったけど、不思議と不快ではなかった。きっと私も同じような手だったからだと思おう。
アサヒビール工場に到着。「ここで飲むビールはうまいぞ!」っと笑顔で先導する父。本当は、ビール苦いからちょっと苦手。でも父がおいしそうに飲むから「おいしい!」といって飲み続けた。だいぶ飲んだ頃に父が「まさか、お前と酒飲める日がくるなんてなぁ。」と言葉をおとした。ぽたりと父の前のテーブルに水滴が落ちる。ぽたりと私の前のテーブルにも水滴が落ちる。ビールは苦くて少し苦手。だけどこの日からは特別な飲み物になった。

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