LETTERS 〜日常にある、ココロあたたまるお話〜

兄貴とのほろにがい一滴

投稿者:いくちゃん

イラスト

広島から就職するために上京し働いていた時のこと。その会社が賃金を払ってくれなく半年経った時にはすでに会社はもぬけの殻でした。アパートには家賃滞納で、心身ともに疲れ果て人生のどん底でした。
そんな時に、兄貴夫婦が「うちに来い」といってくれました。5人兄妹の2番目の兄貴で年も離れているためあまり話すことはありませんでした。上京早々スリにあったり、会社の社長にもだまされたり、散々な目にあっていた時に兄貴夫婦から暖かいご飯とみそ汁を頂いたときには涙が止まりませんでした。
夜に、兄貴がビールとつまみを持ってきてくれました。多分、初めて泊まる夜に寝付けないと困ると気遣ってくれたのでしょう。兄貴と一緒に話した内容はほとんど覚えていませんが、これだけは忘れられないのがあります。「我慢せんでええ、遠慮もええ、この世に兄妹しかおらんけん。」涙がホホをツーとつたって机にぼたぼた落ちて、コップに入っているビールの中にも入っていました。いま思えば、こんな風に涙を流したのはこれが最初で最後でした。涙のしょっぱさとビールの味が混ざりあったほろ苦い味、辛い状況下でのいい思い出です。
その兄貴もガンで他界して今年が三回忌です。来月の命日には兄貴の好きだったアサヒビールをケースで持って行って兄妹仲良く飲み明かしたいと思います。

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