LETTERS 〜日常にある、ココロあたたまるお話〜

父との乾杯

投稿者:number22

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21歳、念願のアメリカ留学。ふるさとの新潟とは12時間の時差があり、メールも普及していない時代です。滅多に自分の事を話さない私の動向を両親が知るのは、実家に届くクレジットカードの明細です。たまの電話をすると、「ああ、先月の週末は映画館にいったんだな?」とか「スーパーでまとめ買いをしたな?」とか見透かされている様でビックリしたものです。
そんな大学生活、ある週末にパーティーを開くことになり、買い出しに酒屋へいくと、ビールの陳列棚の一番端にスーパードライが並んでいました。その銀色のラベルを見たら、少年時代の私と父との会話が蘇りました。野球中継を観ながら晩酌をしている父は「今、ビールは辛口ってのが流行っててな~。その中でもスーパードライが一番だ」と、当時小学生の私には、まるで役に立たない情報です。父の顔が浮かんだ私は、他のアメリカ産のビールに比べると値段が高いスーパードライを一本だけ買いました。
そして今、12年が過ぎ、東京で結婚した私は父親になりました。妻と3歳になる娘を新潟に連れて行き、もう「お祖父ちゃん」になった父と、スーパードライで晩酌します。言葉にできない感謝を込めて、心の中で乾杯しています。

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