LETTERS 〜日常にある、ココロあたたまるお話〜

再出発への記念酒スーパードライ

投稿者:上州旅人

イラスト

20代の後半、仕事のない時期を過ごした。自分なりの夢を追いかけたが、現実は甘くはなく、まさに八方ふさがりの日々が続いた。
そんな重圧から脱出したくて、たまたま九州に住む親友が「遊びに来い」と誘ってくれたのに応じて、汽車に飛び乗った。 待ち合わせの門司港駅に降り立ったが、友はまだ来ていなかった。待合室のベンチに一人腰かけていると、なぜか日常の不安が心に広がってきた。そんな時、一人のおっちゃんが横に座った。酔客かといぶかったが、その横顔は柔和で優しい。
おっちゃんは「旅行か」と言うと、傍らのビニール袋から缶ビールを取り出し、勧めてくれた。それは冷えたスーパードライだった。気がつけばベンチで男二人の小宴になった。不思議にも初対面なのに、私は今職を探していることやうまくいかないことをおっちゃんに打ち明けた。それをおっちゃんは笑顔で聞いてくれ、最後に「人生、晴れたり曇ったり。何とかなる。」と再びスーパードライを私にくれた。
あの時の交わしたビールの喉越しとおっちゃんの温かみは今も胸にある。それは再出発への勇気をくれた記念日だった。

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